方解石 calcite CaCO3 戻る

六方晶系 一軸性(−) ω=1.658 ε=1.486 ω-ε=0.172
※多くの炭酸塩鉱物は結晶構造において三角形の炭酸基(CO3)が平行配列しているため複屈折量が異常に大きく,平行ニコルでステージを回転させると結晶粒界やへき開線が浮き上がったり沈んだりするように見え,クロスニコルでは干渉色は8〜9次,あるいはそれ以上に達し虹色やくすんだ黄色に見える。

形態:通常は他形でモザイク状集合体をなしたり,他の造岩鉱物の間を末期晶出物として充填する。なお,安山岩〜玄武岩には気孔や割れ目を充填する熱水鉱物として沸石類などとともに見られる。

色・多色性:無色で多色性はない。

消光角:通常は他形で定義されない。

へき開:3方向(1 0 -1 1)にきわめて完全だが,粒子の方向で1〜2方向にしか見られない場合も多い。

伸長:定義されない。

双晶:(0 1 -1 2)に見られ,圧力を受けた結晶質石灰岩や石灰質片岩ではそれが顕著な集片状の双晶となっていることもある(方解石やドロマイトは圧力を受けると,容易に(0 1 -1 2)面に原子の滑りが起き,変形双晶が生じる)。

累帯構造:認められない。

産状

石灰岩,および,それが変成作用を受けてできた結晶質石灰岩(接触変成岩)や石灰質片岩(広域変成岩)の主要構成鉱物。なお,石灰質片岩を構成するものは圧力で変形している場合が多く,へき開線などが湾曲し,また圧力による(0 1 -1 2)の双晶がよく見られる。

火成岩の造岩鉱物としてはカーボナタイトの主要構成鉱物として磁鉄鉱・リン灰石・黒雲母・パイロクロアなどと共生する。

また,安山岩〜玄武岩が中性〜弱アルカリの熱水変質作用を受けた部分にも変質鉱物として頻繁に不規則な微粒状で見られ,その中に細脈状をなすことも多い(なお,もともとCaに乏しい流紋岩は熱水変質作用を受けても方解石は生じにくい)。そして,水中で噴出した安山岩〜玄武岩の気孔を沸石類などと共に充填していることも多い(主に,海水がマグマで温められ,それが火山岩自身の空隙に入り込み方解石や沸石類がそこで沈殿する)。


結晶質石灰岩を構成する方解石(視野全体)
方解石・ドロマイト・マグネサイトなどの炭酸塩鉱物は,複屈折量が非常に大きく(結晶方位により屈折率が非常に違う),個々の粒子に注目しつつステージを回転させると,それらの輪郭・内部の傷・割れ目がはっきり見えたり消えたりする(個々の粒子が浮かび上がったり沈んだりするように見える)。
また,へき開は極めて完全で,3方向にあるが,粒子の方向により1〜2方向にしか見られない場合も多い。


肉眼で見た結晶質石灰岩



結晶質石灰岩を構成する方解石(視野全体)
方解石などの炭酸塩鉱物は,複屈折量が非常に大きくクロスニコルでは干渉色は8〜9次に達し,虹色に見える。
なお,ドロマイトは方解石よりも更に複屈折量が大きく,マグネサイトはドロマイトよりも更に複屈折量が大きく10次以上の干渉色を示し,虹色を超えてくすんだ黄色の干渉色に見える。





石灰質片岩を構成する方解石(虹色の部分全体) Qz:石英
広域変成岩である石灰質片岩は,石灰岩が広域変成作用で圧力を受けつつ変成したものである。その際,それを構成する
方解石は(0 1 -1 2)に沿い容易に原子の滑りが起き,集片状の変形双晶が生じやすい。この変形双晶は上画像のようにクロスニコルで消光した部分とそうでない部分の明暗の縞模様として認められ,その双晶境界はやや湾曲していることもある(右画像中の,中央やや上よりの部分など)。
方解石はこのように圧力で変形双晶ができることで変形しやすいので,方解石からなる石灰岩は他の岩石に比べ,可塑性に富み,褶曲しやすい。また,結晶片岩中の方解石脈やドロマイト脈は変成流体から沈殿したものだけでなく,それらが固体の状態で変形しながら結晶片岩中の片理を直角に切るような割れ目に貫入しつつ形成されたものも多く,その場合,偏光顕微鏡下でこのような顕著な変形双晶が見られる。






熱水変質作用を受けた安山岩中の方解石
中性〜弱アルカリ性の熱水変質作用により安山岩の石基や斜長石中に塵状の方解石がたくさんできている。また,岩石全体を貫く細脈としても見られる。一方,ケイ長質岩である流紋岩質の岩石はもともとCaが少ないため,安山岩や玄武岩の場合ほど熱水変質で方解石ができることは少ない。また,パイロフィライトなどが生じるような酸性の熱水変質作用では方解石のような炭酸塩鉱物はできない。